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この記事は過去に雑誌へ寄稿し、掲載された記事を複製したものになります。
京都機械工具株式会社(以下、KTC)は、KTCブランドで、自動車整備用工具、関連機器類、その他一般作業工具類などを提供する工具メーカーです。
今回のテーマは「工具を末永くお使い頂くため」のヒントです。
読者の皆様は、乗り物や道具など大切に長く愛用されているものはありませんか?
KTCが製造する工具においては、長年大切にご愛用いただいているケースがたくさんあります。ご両親や祖父からの譲り受けたものを、今でも現役で使用しているという話は少なくありません。
今回は、工具をまるで自分の手のように、長年ご愛用頂くための取組みについてご紹介いたします。
創業当時に制定した「社是」(右図)は、当時から変わらないものとして、社内に浸透しています。
創業当時より海外製の高品質な工具に影響を受け、「一流志向」を持ったものづくりを行っていました。高品質な工具をどうにか日本で作れないかと試行錯誤を行い、創業2年目には、独自製法や、金属加工の生産一貫体制を確立しました。
当時の生産現場では、作業の多くは手作業で、大量の熟練工が必要になっていました。さらに、生産量を優先するあまり、危険な作業も多く残っていました。人員が増えると、誰でもできるように作業を標準化しなければならない、安全に作業するためには、危険個所を改善していかなければならないなど、様々な課題が明らかになりました。
このことがきっかけで安全委員会を発足させ、現場改善活動も活発に行われるようになりました。これらの活動の基盤となったのが「3S」でした。そして、「3S 」 は社是同様、会社の事業基盤として非常に重要な精神の一つとなっています。
安全で、壊れないように製造している工具も、いつかは寿命が訪れます。
それでも、正しい使い方をすれば、故障は減らせ、長く使うことができるのです。上部にあるラチェットハンドルの写真は、半世紀以上前に造られた工具であり、今も現役で使われているラチェットハンドルは、そんなことを教えてくれているようです。
工具を末永くご愛用頂くには、いくつかのポイントがあります。
それは、3Sの考え方、発想です。
工具が傷んでしまうよくある事例として、工具が煩雑に置かれている、定位置に置かれておらず、不意に踏んでしまったりしてしまう。
使いっぱなしの状態でおいておく等・・・。このような状態では、工具の寿命を縮めてしまいかねません。
長年ご愛用頂くためには、「3Sの徹底」と工具それぞれに合ったメンテナンスが必要になってきます。
KTCでは、工具の末永くご愛用頂くために「安心工具ケアBOOK」を刊行し、工具の定期的なメンテナンスをオススメしています。
ここからは、トルクレンチにフォーカスして、大切に使って頂くためのポイントをご説明します。
トルクレンチは、精密な「計測機器」です。落下などの衝撃で簡単に精度が変わってしまいます。
計測機器であるトルクレンチを扱うときに大切な3つのルールがあります。
①保管時の設定トルクは、測定範囲の最低値にセット。
②高温・多湿・ほこりは避ける。
③定期的な校正を行う。
この3つのルールをしっかりと守ることで、内部のバネや各部位の摩耗や、測定機器としての精度低下を未然に防ぐことができます。
このように、工具もルールに基づき、管理とメンテナンスをしっかり行えば、1ページ目でご紹介したようなラチェットハンドル同様に、長持ちも夢ではありません。しかし、共用で使用すると、中々うまくいかない・・といったことはよくあります。
そういった際に思い出していただきたいのが、3Sの発想!まず、工具の保管、メンテナンスルールを決めるそれを、運用してみる。運用が難しい場合は、ルールを再考してみるこのサイクルを、すでにお使いの工具類の整理、整頓で実践いただければ、効果が生まれてきます。工具は長持ちし、結果としてコスト削減にも繋がります。
お客様が弊社製品を安心してお使い頂くために、本社敷地内に購入前・購入時・購入後の3つの切り口でサービスを行う施設「KTC ものづくり技術館 匠工房」をオープンしました。
工房内の修理サービス用の部品庫には約3,000種類以上の部品を準備。愛着ある手になじんだ工具を、末永くご使用頂くためにバックアップ体制を整え、ベテランスタッフによって一品ずつ修理しています。また、購入前、購入時には、正しい使い方の啓発活動や、工具の最適な選び方などのコンサルティングを行っています。
このように、お客様が愛着ある工具を長く使って頂けるような取組みを行っています。
「Base on 3S」シリーズ
KTCの活動基盤になっている「整理・整頓・清掃」(以下、3S)活動から紐解く、工具製品を中心としたモノ(もの・こと)づくりについてご紹介いたします。
Based on 3S vol.01 / 作業の流れを捉えた工具
Based on 3S vol.02 / 3Sをベースとした製品安全の実現
Based on 3S vol.03 / 事例から見る3S活動と安全・安心な職場
Based on 3S vol.04 / 安全啓発と3Sについて
Based on 3S vol.05 / 最上級を目指したものづくり
Based on 3S vol.06 / 能率・効率を高める活動