Overview

京都機械工具株式会社(以下、KTC)は、KTCのブランドで、自動車整備用工具、関連機器、その他一般作業工具などを提供する工具メーカーです。

本記事は、「Base on 3S」シリーズと題しまして、KTCの活動基盤になっている「整理・整頓・清掃」(以下、3S)活動から紐解く、工具製品を中心としたモノ(もの・こと)づくりについてご紹介していきます。

 

今回は、KTCで実際に行っている3S活動についてご紹介させていただきます。

 

 

3S活動開始のきっかけ

KTCは、1950年に創業しモータリゼーションと共に成長を続け、大量の工具を生産・販売をして参りました。創業時まもなく特需に見舞われた生産現場では、作業の多くは手作業で、大量の熟練工が必要になっていました。

 

さらに、生産量を優先するあまり、危険な作業も多く残っていました。人員が増えると、誰でもできるように作業を標準化しなければならない、安全に作業するためには、危険個所を改善していかなければならない...など、様々な課題が明らかになりました。

 

このことがきっかけで安全委員会を発足させ、現場改善も活発に行われるようになりました。これらの活動の基盤となったのが3Sです。現在の製造部門では、作業内容は標準化され、危険な個所は大幅に減少していますが、KTCでは安全で快適、能率・効率的な職場環境の実現を追求し続けています。

 

では、具体的なKTCの3S活動の一部をご紹介いたします。

社内3S活動の事例~保管方法を工夫して、金型を探し回るムダをなくす~

ご紹介するのは、複数工場から金型を受け入れ、メンテナンスをして出荷している部署の取組み事例です。

TT4_6102

金型置き場イメージ(改善後)

 

“優先順位を決め、置き場を決める”

[背景]

金型の整理ができていなかった当初は、どこに何が保管されているのかが分からず、「どこに収納したのか?」を職場の人たちに聞きまわるムダが発生していました。

 

対策1:置き場に標識

最初は標識がないことが原因と考え、置き場に標識をするようにしましたが、型棚の間口が不足すると入りきらなくなった金型が標識とは別の場所に収められるようになりました。

対策2:不用品の廃棄

「今、必要なものをすぐに取り出したい」思いからまず金型を整理し、要らないものを廃棄しました。

 

対策3:必要な収納枠を確保

次に各工場から返却される金型の1ヵ月あたりの最大受け入れ数を割り出して、必要な間口を確保しました。

 

しかし、これでも必要なものをすぐに取り出すことはできません。

 

そこで、「金型の納期」と「加工時間」が記された管理表をもとに、棚の間口を週単位で区切ることにしました。直近1週間の内に加工する金型が収められた間口には、「優先1」、次週分が「優先2」というように区切り、標識をしました。

 

標識は緊急品対応で間口が増減しても、移動できるようにマグネット式にしました。また、1週間分の加工対象品「優先1」が完了すると、「優先2」の標識を「優先1」に作業者が貼り替えます。こうすることで、探しまわるムダがなくなり、加工の進捗も分かりやすくなりました。

 

3S活動から見えた「安全」に対しての取組み

職場の3S活動を進めていくと、次に安全面の課題が見えてきました。

工具の“原型”となる金型はとても重く、人の力で動かすのは、至難の業です。金型の移動は、主にハンドリフターを使いますが、このとき余計な金型が動き、落下すると事故につながります。

TT4_6067

 

そこで、金型の保管スペースごとに仕切りを付け、ボルトをストッパーとして設置しました。ストッパーは取り外し可能なので、簡単に金型の移動ができます。これも、現場から生まれた知恵と工夫です。

TT4_6078

 

3S活動が、職場の安全につながり、働く環境も快適になりました。いかがでしょうか?

 

この事例では、“優先順位を決め、置き場を決める”ルール作りが起点となり、3S動の徹底で課題が見え、安全に対する取り組みにつながりました。つまり、『守るべきことを決め、決めたことを守る』ことが、安全な職場作りの第一歩となるのです。

3S活動から見えたトレーサビリティによる安全、安心な職場

3S活動が定着し、成果が見えると次のステップに進みます。

安全、安心な職場環境を目指しながら、品質向上やコスト削減の業務改善に着手するようになります。

 

例えば、作業指示書や手順書の一元管理を徹底したい、誰が作業しても同じ品質を保ちたい、作業記録を手間なく残したい...など、どの職場においても切実な課題ではないでしょうか?

 

そこでKTCでは、これらの課題解決を手助けするツールとして、人が行った作業をIoT工具などのデバイスを通じて行う、トレーサビリティ視点を取り入れた仕組みを構築しました。

 

3Sの対象は、「もの、場所、情報」です。手順(守るべきこと)を作り、手順通りに作業を行ったとしても、記録(情報)が正しく記録されていなかったり、所定の保管場所に記録がなかったりすると、作業そのものの信ぴょう性が疑われます。

 

そこで、3S発想の下、仕組み構築に至りました。

✓ 守るべきことを決め、その決めた手順を統一し、明確化

✓ 情報を整理し確実に記録する仕組み

✓ 手順通りに行わないと進まない。誰でも出来る化

 

3Sを徹底することで“安全、安心な職場環境を実現する”一つの手段としてソフトウェアの開発を行いました。そしてまた、KTCの工具も同じ発想で製品開発を行っております。この思想を守り続けることで、作業者の安全、快適、能率・効率的な職場環境の実現に貢献して参りたいと考えております。

 

次回は、「3S啓蒙と安全な工具と使い方」についてご説明致します。

ポイント

3S活動は「守るべきことを決め、決めたことを守る」ことから始まる。

関連記事

「Base on 3S」シリーズ

KTCの活動基盤になっている「整理・整頓・清掃」(以下、3S)活動から紐解く、工具製品を中心としたモノ(もの・こと)づくりについてご紹介いたします。

 

Based on 3S vol.01 / 作業の流れを捉えた工具

Based on 3S vol.02 / 3Sをベースとした製品安全の実現​

Based on 3S vol.03 / 事例から見る3S活動と安全・安心な職場

vol.04以降は後日掲載予定

Based on 3S vol.04 / 安全啓発と3Sについて

Based on 3S vol.05 / 最上級を目指したものづくり

Based on 3S vol.06 / 能率・効率を高める活動