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京都機械工具株式会社(以下、KTC)は、KTCのブランドで、自動車整備用工具、関連機器、その他一般作業工具などを提供する工具メーカーです。
本記事は、「Base on 3S」シリーズと題しまして、KTCの活動基盤になっている「整理・整頓・清掃」(以下、3S)活動から紐解く、工具製品を中心としたモノ(もの・こと)づくりについてご紹介していきます。
皆様、KTCのネプロス(nepros)はご存知でしょうか? 世界一のハンドツールを目指し、一切の妥協を排して世に送り出したのが「nepros」です。素材開発、設計思想、製造技術、すべてにおいて、KTCのものづくりの粋を集めたフラグシップモデルです。ネプロスは、“NEwPROfessionalSatisfaction”から創り出された造語で、「達人の新たなる満足」という意味を持ち、1995年の発売以来、多くのメカニックにご愛用頂いております。
本記事では、ネプロスの開発がどのような背景で行われてきたかを紐解きつつ、KTCのものづくりへの考え方を3S活動に交え、ご紹介したいと思います。
近年、通信網や物流網の発達などに伴い、海外製品の入手が誰でも、簡単に購入できる環境が整ってきております。工具業界では、1980年代頃に海外ブランドの高級工具が日本に本格参入し、世界のライバル達としのぎを削る時代が到来しました。KTCでも世界へ通じる製品として、3,000セット限定販売のデラックスツールシリーズや、美しさを追求したミラーツールの販売を開始しました。そこから更なる飛躍を図り、海外製品に対抗すべく当時の日本の工具業界では考えられない画期的なアイデアや技術力を投入した製品企画に着手しました。
当時の自動車に求められるものは、「馬力やスピードなどの性能」から「安全性、環境、快適性」に大きくシフトしていました。それに伴い、自動車の構造も大きく変化し、整備個所も変化しました。工具の理想を追い求め、「世界No.1の工具を作りたい」というこの製品企画プロジェクトは、初めに約300名にのぼるメカニックへのヒアリングからスタートしました。
各メカニックの工具に対する思いは、様々。世界No.1の工具に求められる要望に対する真の課題にたどりつくために行ったのは、ヒアリングした「情報の整理」でした。
情報を、頻度(時間軸)や重要度、必要性等から層別を行い、日本の工具の強度(硬さと粘り強さ)の課題を見いだし、素材開発へ着手しました。素材の開発が可能にしたことは、工具を極限に薄くするなど理想の形状の追求です。そして、それに適した熱処理技術を開発し、薄く、軽くした工具で、歪が少なく、従来製品以上の高強度・高靭性・高耐久性を実現しました。さらに、人間工学や力学など様々な観点から使いやすさを徹底的に追求した設計を行いました。情報の整理から、素材開発と最適な熱処理技術を見いだし、ネプロスが誕生しました。
ネプロスは25年経った今でも、情報の収集と層別を継続しています。近年では、さらに厳しくなった自動車整備環境で直面した狭所作業の問題に対し、ラチェットハンドルのギア多数化と本体の軽量化の課題へと取り組みました。そして、数年の研究開発を行い、2012年に満を持して90枚ギアのネプロスラチェットハンドルシリーズを発売いたしました。小判型ヘッドとしては世界最多クラスとなるこのシリーズは、狭所作業での効果を発揮します。その機能に加え、使う気持ちよさといった作業者のフィーリングも追求しました。狭い所で活躍する送り角4度ギアには「カチカチカチ」というクリック音と共に、使う人の感性を刺激する小気味の良い操作感は、情報の整理から得たフィーリングへの追求結果でした。
KTCは3Sの目的と同様に「お客様の安全、快適、能率・効率の実現」を信条としてモノづくりを行っています。その中でも「安全」は最優先される事項であり、どれだけ、「快適、能率・効率的なものであっても、安全が阻害されるものは、提供しないこと」が事業全般におけるポリシーです。
ネプロスの開発時にも例外なく、「安全な工具」とは何か?を追求していくため、情報の収集と層別を行いました。高強度・高靭性・高耐久性を実現することで、壊れにくさを追求しつつ、作業者が大きなけがをしないように、予め壊れるポイント(ヒューズポイント)の設計を行いました。
例えばラチェットハンドルでは、壊れる個所を予めコントロールし、想定以上の力がかかると、ドライブがねじ切る様に安全に配慮した設計がされています。
これを実現するために、品質を保証できる社内一貫生産体制を確立しております。またデザインの部分では、デザイン工学を取り入れた高強度を支えるR形状や、手になじむ流線形状など、使用時の手の負担を軽減するように設計すると共に、見た目の美しさを兼ね備えた機能美を追求しています。現在では、ネプロス製品で培われたノウハウを、KTCロゴのついたスタンダード製品に展開しています。このように、安全な工具を実現するため情報の整理と層別を行い、ネプロスを開発しています。次回は、「能率・効率を高める活動」についてご説明致します。
「Base on 3S」シリーズ
KTCの活動基盤になっている「整理・整頓・清掃」(以下、3S)活動から紐解く、工具製品を中心としたモノ(もの・こと)づくりについてご紹介いたします。
Based on 3S vol.01 / 作業の流れを捉えた工具
Based on 3S vol.02 / 3Sをベースとした製品安全の実現
Based on 3S vol.03 / 事例から見る3S活動と安全・安心な職場
Based on 3S vol.04 / 安全啓発と3Sについて
Based on 3S vol.05 / 最上級を目指したものづくり
※後日掲載