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この記事は過去に雑誌へ寄稿し、掲載された記事を複製したものになります。
京都機械工具株式会社(以下、KTC)は、KTCブランドで、自動車整備用工具、関連機器類、その他一般作業工具類などを提供する工具メーカーです。
KTCは、染色機械を製造していた京都機械という会社のメンテナンス工具製造部門から、齋藤喜一・山崎宗次郎・宇城正行3 名が独立し、 1950 年 8 月 2 日に京都機械工具株式会社を設立しました。
創業当時は戦後復興に多くの自動車が使われ始め、「日本の復興、これからの経済発展のために自動車は必要不可欠だ 。それをメンテナンスする工具もまた必要不可欠になるはずだ」と奮起し、今日にも続く独自技術の工具製造 方法を確立していきました。
その後も、1960年代から始まったモータリゼーションを皮切りに、日本の自動車産業の発展と共に成長して参りました。
今回は、創業者たちの精神 がどのように 従業員に 浸透し、現在のKTCが創られて 来たのかを、社史を交えながらご紹介したいと思います。
創業当時に制定した「社是」(右図)は、当時から変わらないものとして、社内に浸透しています。
創業当時より海外製の高品質な工具に影響を受け、「一流志向」を持ったものづくりを行っていました。高品質な工具をどうにか日本で作れないかと試行錯誤を行い、創業2年目には、独自製法や、金属加工の生産一貫体制を確立しました。
当時の生産現場では、作業の多くは手作業で、大量の熟練工が必要になっていました。さらに、生産量を優先するあまり、危険な作業も多く残っていました。人員が増えると、誰でもできるように作業を標準化しなければならない、安全に作業するためには、危険個所を改善していかなければならない など、様々な課題が明らかになりました。このことがきっかけで安全委員会を発足させ、現場改
善活動も活発に行われるようになりました。これらの活動の基盤となったのが「3S」でした。そして、「3S 」 は社是同様、会社の事業基盤として非常に重要な精神の一つとなっています。
経営理念に基づき、軽くて強くて使いよい工具(ツール)を追求するため、3つの源泉から工具を進化させてきました。
✓材質の進化…工具専用鋼・球状化焼なまし、表面処理・イオンプレーティング機能性素材
✓構造機構の進化… 整備用特殊工具、トポロジー最適化
✓統合の進化…センサー、エレクトロニクス、ソフトウェアと工具の統合データ分析とAI
単純に思えるスパナであっても、鋼よりスパナの性質にあった素材は何か?その素材を実現する製造方法は何か?
また、構造にムダは無いか?などを追求しています。
その一つの例として、軽量且つ工具の形そのものに機能を持たすトポロジー最適化をした工具やセルロースナノファイバーを材料にした工具へのチャレンジを進めています。
求められた機能の本質を見極め、メーカーだからできる、「形モノ・コト にすること」で、工具を極めていっています。
最近の経営学では、パーパス経営が注目を浴びています。
社会から求められていることを理解し、経営理念やビジョンを見出し事業価値を高めていくことが、今の社会で大切だと言われています。その中で、どのように継承・実行していくのか?が非常に大切です。
KTCにおいても経営理念やビジョンをしっかりと定着させ、技術の源泉を磨き続けていくことは非常に困難な連続です。それでも 70 年余りの間事業を継続できているのは、足腰になる基礎の部分を、社員全員が理解・納得し行動に移せる実践しています。基礎になる部分、それは、3Sです。
下図のように土台の上に、「人財育成」と「仕組みづくり」という柱で、屋根になるビジョンを支えています。
京都には創業1000年を超える会社もあり、 100年未満の会社はベンチャー企業です。KTC もまだまだ発展途上です。これからも、会社の精神を継承しながら事業を継続するためには、企業活動の基盤である3S を徹底していきたいと考えています。
「Base on 3S」シリーズ
KTCの活動基盤になっている「整理・整頓・清掃」(以下、3S)活動から紐解く、工具製品を中心としたモノ(もの・こと)づくりについてご紹介いたします。
Based on 3S vol.01 / 作業の流れを捉えた工具
Based on 3S vol.02 / 3Sをベースとした製品安全の実現
Based on 3S vol.03 / 事例から見る3S活動と安全・安心な職場
Based on 3S vol.04 / 安全啓発と3Sについて
Based on 3S vol.05 / 最上級を目指したものづくり