はじめに

vol.1,2では、KTCの会社概要と製品安全への取組みをご紹介しました。 少し固いお話になってしまったかもしれません。

「工具大進化 vol.3」は、 工具進化の系譜とKTCの持つ遺伝子、 そこから創りだされた様々な工具の系統分類のについてお伝えします。

 

KTCは、 「軽くて、 強くて、 使いよい」をコンセプトに、 10,000アイテム以上の多彩な製品を開発し、アイテム数生産量ともに国内No.1の実績と信頼をいただいております。 その進化の系譜を、 2016年に 「工具大進化」と題したインフォグラフィックスで発表しました。「工具大進化」は、 多種多様な工具分類の中から、ボルト ・ ねじを回す(締める ・ 緩める)作業を目的機能とした工具に絞り、 その提供価値の進化を描きました。 長くこの「工具大進化」を用いて、 社内外にKTCの「これまで」と「これから」を説明して参りましたが、2021年末にその進化版を公開いたしました。

この最新の「工具大進化」に沿って工具とツールの提供価値の進化をご説明差し上げます。

 

工具大進化(旧)

 

『シン・コウグ』

2001年宇宙の旅」を書いたSF作家、 A·C ・ クラーク氏は、 「人間が道具を発明した、 という考え方は一面の真理であり、 むしろ道具が人間を発明した、 というほうが正確であろう」との見方を示されていたそうです。

 

我々の遠い祖先のサルが、 飢えに苦しみ、 樹上から離れ、 二足歩行を体得し、 遠くを眺め、 両手を使うことで脳が大きくなり、 次に獲得したことが、 「道具を使う」ということだそうです。 発明したというより、見つけて使い出したことで、 さらなるヒトヘの進化を早めたということなのでしょう。 周辺に転がっていた石や動物の骨は素手より強く、 その先端を尖らせ、 柄をつけることで、 軽くて、 強くて、 使いやすい道具としました。やがてヒトは、石器から銅器、鉄器と材料を変化させ、鉄を高温まで加熱し、打ちつけ、急冷却を繰り返し、鋼として鍛え、材料の性質も向上させました。刃も様々な形状に進化させ、ばねや置き針のような形状を巧みに利用し、比べること、図ることを知ります。さらに歯車やクランクなど、機能を創り出すメカニズム(機構)は、まさに人間の能力拡張をもたらしたといえるのです。

 

シン・コウグ

KTCの工具開発は、 まさにこの3つの進化、 つまり 「材質の進化」 「構造 ・機構の進化」 「統合の進化」を続けてきたと考えております。

 

工具専用鋼の開発、 球状化焼なましによる強靭性の実現、 表面処理による長寿命化などの 「材質の進化」、 ラチェット機構、 用途に特化させた専用工具、 強度を損なわずに軽量化を実現する3D形状の開発などの 「構造・機構の進化」、 そして、工具に動力源、 センサー、マイコンなどを搭載する 「統合の進化」。 この統合領域は、通信機能、 ソフトウェアヘと拡大し、「つながる化」、 「見える化」を画期的な進化を実現、 今後、 拡張現実(AR)や人工知能(A|)との統合も、 すぐそこまで来ており、 飛躍的な人間の能力拡張をもたらすと考えております。

汎用工具と専用工具

KTCの製品安全の基本姿勢のもと、多種多様な工具が生まれています。 その基本形で、 安全に大きく関わる 「ボルト・ねじを回す」工具の系統分類をご説明します。

 

なじみ深い 「汎用工具」は、 機構の違いから分類しています。まずは、 ドライバに代表される 「内回し」工具。ねじに刻まれた様々な溝にビッ卜差し込み廻します。 基本形ですが、 作業用途と構造で、 たくさんの種類がございます。

 

目的に合ったドライバを選ぶポイントはご存じですか?

軸の根元にあるボルスターと呼ぶ六角の役目を皆さんご存じでしょうか?

 

次に、六角形のボルトヘッドやナットの外側を包むように扱う 「外回し」工具とは、スパナ、めがね、ソケットレンチなどです。 二面幅を調整して使うモンキレンチの正しい回す方向をご存じですか?便利な工具ですが、 上あご側に回すと下あごがレンチから離れる方向に力が働き危険ですので、 必ず下あご側に回してください。

 

作業者の力を大きく、早く回転軸に伝える各種ハンドルなどは 「駆動工具」と呼んでいます。 ソケットレンチ用ハンドルの代表格ラチェットハンドルも、 柄の長さや首折れタイプなど、 作業環境に合わせ適材適所選んでください。 KTCのラチェットハンドルは、 作業中にソケットが外れないよう確実に保持する機構を採用、 プッシュボタンを押しながらでないとソケットの脱着はできません。

 

さらに、 自動車整備作業においては、 作業ごと、 車種ごとの 「専用工具」の多様化が特徴です。 この技術通信の読者には、なじみがある自動車専用工具かもしれませんが、他の業界では、工具メー カーによる専用工具の提供を、 意外にご存じありません。KTCは、 整備作業の時短・少人化・効率化に貢献する専用工具開発に力を注ぎ続けています。

 

KTC社内では、 「オイル三兄弟」と呼んでいる、 すこし変わった工具をご存じでしょうか?時間制約のある中で、 安全で、 確実にお客様の財産である自動車をお預かり整備・点検するプロ整備士ならではのご要望にお応えするもので、 たいへんご好評をいただいています。 「材質の進化」は、 金属だけでじゃありません。

 

オイル

 

「動力工具」では、 油圧、 空気圧から、 より作業の能率・効率を向上させるケーブルレスのバッテリ駆動がどんどん主流になってきており、より軽くて、 強くて、使いやすい工具を追及しております。

 

動力

 

一層目

プロメカニック向け工具nepros

ラチェットハンドル  

 

系統樹の最上段、 黒のシルエットで表現しているのが、 最高の機能と性能、 上質な操作感と美しさを実現した 「nepros (ネプロス)シリーズ」です。

 

1990 年初頭、 KTCは自動車メンテナンスのプロフェッショナルに向けた世界一のハンドツールをつくることを決意しました。 この開発において KTCが目指したことは、 極めてシンプルでした。

 

世界中の競合他社製品を徹底的に検証し、 素材、 設計、 製造技術、工作精度など、 すべてにおいて他社製品を上回り、 なおかつ自分たちの理想の形を追い求め、 常に世界一であり続けるために絶え間なく進化し続ける。 5 年の歳月をかけて生み出されたのが neprosです。

 

nepros の大きな特長の一つが、各部の寸法における精度の高さです。 公差を限りなくゼロに近づけ、ボルト ・ ナットと工具との確実なフィット感をもたらし、 安全で確実な作業を実現します。KTCが考える理想の工具を具現化した nepros に触れ、 他のハンドツ ールでは味わえない深い満足感を感じていただきたいのですが、 まずは、 neprosの特長をよりわかりやすくご紹介した動画とWeb サイトで、 是非ご堪能ください。

 

さらに工具大進化の図中には、「nepros neXT (ネクスト)」と呼ぶ「トポロジー最適化工具」のシルエットを描いております。neXTは、京都大学大学院との産学連携研究が結実したものですが、このベールをはがすのは、あともう少しお待たせすることになると思います。

 

匠京子

 

次回のテーマ

次回のテーマは、「トルクレンチとトルク管理」についてです。

ぜひ、ご覧くださいね!

 

<過去の記事コチラ>

工具大進化 vol.1

工具大進化 vol.2