はじめに

京都機械工具株式会社(以下、KTC)は、KTCのブランドで、自動車整備用工具、関連機器、 その他一般作業工具等を提供する工具メーカーです。
当社は1950年に創業し、 主に自動車の車載工具の生産を開始、 翌年には業界初の社内一貫生産体制を確立し、 モータリゼーションによる需要拡大に応えるため、 本格的に市販用工具へと進出致しました。
現在まで 「軽くて、強くて、使いよい」をコンセプトに、10,000アイテム以上の多彩な製品を開発し、アイテム数・生産量ともに国内No.1の実績と信頼をいただいております。
この連載で、KTCの工具製品を中心とする


✓「安全に対する考え方」
✓「製品と提供価値を創り出す取り組み」


について、ご紹介致します。

今回は、vol.2ということで、「製品と提供価値を創り出す取り組み」についてご紹介致します。

製品と提供価値を創り出す取り組み 

~安全最優先の製品設計~

 

KTCの製品設計の基本は、ひたすら丈夫で壊れない製品を提供するのではございません。

 

「安全な作業」のため、たとえ誤った使い方をされても、作業者の安全を確保するという設計がなされております。

 

これは、「壊れる個所をコントロールすること」が基本なのですが、プロ用工具が「壊れるのか?」と不審に思われるかもしれません。代表的な製品として、 ソケットレンチ用ハンドルを例にご説明致します。

設計既定値トルク

ねじを締めるときには、設計既定値を超えるようなトルクを掛けられることはないかと思いますが、緩めるときはどうでしょう?

 

ねじが錆び付き、 固着してしまった場合には、「ハンドルにパイプをかける」、「ハンマーで叩く」、「蹴飛ばす」といったようなこと、お心当たりはございませんか?

 

工具に想定外に大きな力が掛かってしまうと、いくら丈夫な工具であっても破壊され、作業者の身に、 作業対象に対しても危険が生じるおそれがあります。

「このような使用法は誤りです」と申し上げたいところですが、「工具を壊すつもり」と覚悟を決めてやむを得ぬ状況は想定しなければなりません。

 

このような場合には、ハンドルが折れたり、ラチェットギアが歯飛びすることで一気に空転し、手を周辺にぶつけたり、壊れた部品が飛散して目に入る、 といった事故が想定されます。

ヒューズ

 

 

ヒューズポイント(最弱部)を設定

KTCのソケットレンチ用ハンドルでは、 差込角(ハンドルとソケットの接続部)をウィークポイント(最弱部)として設定し、過大な力が掛かったときに壊れる部位を特定しています。
設計段階で破壊試験を繰り返し、強度の妥当性を検証、その上でJIS規定値以上の負荷をかけ、 想定した個所がねじ切れることを確認しています。製品の安全性は関連部門長の出席するデザインレビューにおいて厳しく審査され、このルールは厳格に運用され、通常使用を超えた範囲での安全性をも検証しているのです。
その上で、想定破壊箇所はリペアキットとして販売、ユーザー自身が部品を交換して修理し、 再び使用できるようにしています。
また、スパナやめがねレンチ、コンビネーションレンチといったレンチ類では、過大な力が掛かったときには、破壊箇所から破片が飛散することなく、ボルトに宛がった口の部分が開いて、それ以上の力が掛けられないようになることを検証しています。
どうしても通常よりも大きな力を掛ける必要がある作業は存在することを認識し、誤った使用でも安全を最大化することを目指しているのです。

破壊個所

 

工具の安全な使用方法に関する情報発信

工具は、その安全な使用に専門知識が必要なものが少なくありません。

一方で、工具の使い方を教える教科書やガイドブックのようなものは少なく、義務教育で教えてもらえるわけでもありません。
KTCは、製品そのものに加え、工具をお使いになる方々が、必要で適切なの「安全、快適、 能率.効率」を実現する情報提供を心掛けています。

使い方

 

工具の正しい使い方や間違った使い方、作業に応じた工具の選び方などを、動画を交えながら紹介する「工具の基礎知識」、トルクレンチ選び方講座を含む、「トルクレンチの基礎知識」などの入門編から、自動車整備の現場作業を流れとしてご提案する「課題解決BOOKシリー ズなど、工具を使用するユーザーの安全に貢献する情報の拡散に努めています。 是非、 ご覧になってください。

 

 

使い方2

 

技育「技術育成」

また、本社敷地内 「KTCものづくり技術館」では、自動車の整備を体験できる研修用ピットを備え、実際に工具を扱う方々を対象とした工具研修会を開催しております。この研修会においても、安全の啓蒙を行っております。昨今の感染症対策下では、ご来社頂く機会を制限しておりますが、近い将来、再開できることを願っております。


また、『現場にこだわり、 積極的な失敗から学ぶ』次世代自動車工ンジニア育成事業に取り組むナンバーナインファクトリー株式会社と協業し、‘‘現場型 ’'育成講 座の展開に着手しました。
ナンバーナインファクトリーは、大手自動車メーカーとベンチャー企業双方での「内部から見た自動車開発」と、自動車関連企業やモビリティ新規参入企業の開発を「外部から見た技術アドバイザー」
として導いた経験に基づく、座学と実習・実践から構成される講座を、そして

KTCは、実際の工具と作業環境で、工具の正しい使い方を学ぶことで、エンジニアが安心・安全にクルマに触れ、クルマと向き合いチャレンジ&失敗をしながら技術力を高めることを目指します。

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