『工具はともだち』について

本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。

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工具はともだち<36>レンチの基本「スパナ」工具を正しく賢く使ってみよう

(cyclist掲載日:2014/3/9)

 

#35工具の“ダイエット”? スリムなボディラインと軽さを追求したシリーズ、KTC「プロフィットツール」

 


ここ数回は、工具づくりの技術のお話をしました。

優れた商品も、使い方を一つ間違えれば、大きな損失に繋がります。私が、この世界に入ったきっかけも、工具の使い方を間違って、当時の大切なバイクを壊してしまったからなのです。

今回は近づく春に向けて、正しい工具の使い方をご紹介。賢く使って楽しくメンテナンスしましょう。

 

まずは、スリムなボディをご紹介した、レンチの基本と言える「スパナ」から。工具の両端が、口が開いているような形状から「オープンエンドレンチ」とも呼ばれるこの工具は、その昔、ローマ帝国の構築物の制作にも使われていた歴史を持っている大変歴史ある工具なんです。

 

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工具の先端が開放されており、その部分で、ボルト・なっとを締め緩めできるため、ボルト・ナットに対して、横からのアクセスが可能な優れものなのですね。

メジャーな工具ゆえ、一般家庭には、必ずと言っていいほど、1~2本程度あると思います。最近では、「スパナ」形状をした簡易的なものが、家具などに附属している場合もあります。

「スパナ」先端の形状もメーカーによって様々ですが、JISでは、「やり形」と「丸形」に分類されます。「丸形」はどちらかといえば、強度重視、「やり形」は、スペースや使い勝手を重視した形状と言えます。我々は、「やり形」形状に拘り、頭部の幅を極力小さくしながらも。力のかかる部分にボリュームを持たせ、強度とコンパクト形状を実現しています。

スパナを正しく使ってみよう

理想的なスパナの使い方は、ボルト・ナットに対して、回転角が鈍角の場合、手前に引くように、そして、鋭角になったら、手のひらで押すように使うのが最も安全な使い方なんですね。力が掛けやすく、手を挟んでしまうなどのリスクが最小限に抑えられます。

また、一般的にスパナは、口径(ヘッドの開いた部分)が柄に対して、15°の角度を持っています。これを裏表交互に使うことで、送り角が30°となり、片側だけで使用するよりも、半分の角度で、ボルト・ナットを回すことが可能になります。ちょっとしたポイントで、便利に使えるようになってるんですね。

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ヘッド部に付けられた角度を利用して、狭い部分にあるボルト・ナットも上手く回すことが可能

 

スパナがボルト・ナットと接するポイントは、2点と少なく、多くな力をかけての締め緩めは、苦手としていますので、少し気遣ってお使い下さいね。愛車メンテナンスにも様々な工具が必要ですが、DIY的に考えれても、「スパナ」を持っておくのは非常に便利です。プロのメカニックに近づいた気分になれますよ。