Index
本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。
一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。
まずは、サイクリストが必ず使用する「六角棒レンチ」から。メンテナンスの基本は、目視です。本体部分に傷や破損部分、変形がないかを確認してください。カケや曲がり、変形はありませんか? そのような工具は、大きく機能が低下してしまいます。さらにボルト・ナットを痛めるだけでなく、工具が破損し、サイクリストの皆さんが怪我をしてしまうケースにつながります。特に曲がっていることはわかりにくい場合がありますので、使用前の目視確認は忘れず実施してください。
工具に曲がりがある場合は、ふだんから締めすぎているということが考えられます。工具だけでなく、愛車にもかなりのダメージを与えてしまっていますよ。決められたトルク以外での締め付けはトラブルの元ですので、ご注意ください。
工具もバイクも目視チェックはメンテナンスの基本!
また大敵なのは、水に濡れたまま放置してしまうこと。素地のままでは水に濡れてしまったあとすぐに錆びてしまいますので、多くの工具類は、表面に何らかの防錆処理が施されています。代表的なものは、銀色に輝くメッキを使った表面処理。表面を滑らかに、耐摩耗性や耐腐食性を向上させ、かつ綺麗に装飾してくれる優れもの。切る作業を行う工具以外には、多く施されています。
しかし、残念なことに、完全に錆びないというわけではありません。防錆処理はあくまでも表面の処理であって、内部に浸透し、錆びない構造に変えてしまうものではないのです。
錆びついてしまった工具(左) 防錆処理の表面のイメージ図(右)
そこで気をつけていただきたいのが、表面処理の剥離です。金属表面に薄い何層もの膜を作っている表面処理は、瞬時に強力な力がかかった場合や、打撃を加えた場合、高所からの落下などにより簡単に剥離してしまいます。少しでもこの剥離が発生し、そこについた水分を長期間放置してしまいますと、剥離部分から錆が発生するだけでなく、素地と膜の間に錆が進行してしまい、使いものにならなくなります。
加えてこの剥離部は非常に硬質であるため、素手で触ってしまうと皮膚を切ってしまうくらいの鋭い刃物に化けてしまいます。私も十数年くらい前のメンテナンス初心者時代に経験し、非常に苦い思いをしました。
工具は、食品のように明確な賞味期限や消費期限が定められていないのが現状です。お使いいただいた工具に何らかの原因が思い当たるなぁと思われたら、まずは、お買い求め先やカスタマーセンターにお問い合わせくださいね。