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本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。
一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。
(cyclist掲載日:2013/9/29)
#29メンテナンスのための工具にも、定期的なメンテナンスを 計測機器類の扱い方
前回までは、皆さんに安全に走行して頂くための最も重要なポイントだと考え、トルク計測機器について詳しくお話ししてきました。メンテナンスに対する意識の高さは重要ですし、まだまだ深い話題もありますので、引き続きよろしくお願いしますね。
今回はというと、緊急対応に役立つツールのお話です。
彼・彼女の関係、上司・部下の関係、もちろん兄弟姉妹もそうですが、ひょんなことで喧嘩したり、仲が悪くなったりなど、トラブルがありますよね。
ボルト・ナットと工具の関係も、似たような側面があります。今までお話ししてきたように、設定されたトルクを超えての締め付けすぎや、反対に締め付け不足は、ボルトの破断や、パーツの破壊につながります。また、サイズにぴったり合わない工具を使用して、ボルトの頭をつぶしてしまったり、穴に対してボルトを斜めに差し込んで、ネジ山を潰してしまったり…。
そんなときに助けてくれる助っ人たちをご紹介したいと思います。締めすぎたり、固着したりしてしまったネジを外す場合、ショックを与えて正常な状態にまで緩める工具があります。「インパクトドライバ」や「ショックドライバ」と呼ばれる工具です。
通常のドライバのほとんどは、ショックを与えて使用できるようには作られていませんが、この「インパクトドライバ」や「ショックドライバ」は別物。ハンマーでグリップエンドを叩く力を、強い回転力に変えてくれる機構で、その回転力を用いて、固く締まったボルトを緩めるのです。
ただし、ご注意!! カーボンなどの高級素材が使われている箇所の場合、破損に繋がる恐れがあるので、使用はお勧めできません。
そして、もうひとつ。私が若い頃にこの工具があれば、どれだけ作業時間を短縮できたか…。
メンテナンス初心者は、どうしても誤ったサイズの工具を使用しがちです。このため、ネジに対して小さい工具を使ってしまうことや、工具を奥まで差し込まず、先端だけでネジを回してネジの頭を潰してしまう(「ネジがなめる」といいます)ことがよくあります。
そんなときに助けてくれるのが、「ねじプライヤ」。
工具の先端が特殊な形状をしていて滑りにくく、通常のプライヤよりも強い力で、潰れたネジを回すことが出来ます。これがあれば、不意のトラブルでネジをなめてしまった時でも、ガブっとかみついてネジを回せるので、安心して下さいね。
これらはあくまで緊急用の工具であり、毎日登場してほしいものではないのですが、ツールバッグに忍ばせておくと安心はできると思います。ボルト・ナットと不仲にならないように、適切な工具を使用して下さいね。
今回の記事では固着したねじの緩めに「インパクトドライバ」を紹介しています。
一般にこういった固着したねじに対してよく使われる手法として、貫通ドライバの座金(お尻の部分)を叩く...ということをされた方も多いのではないでしょうか。
インパクトドライバでも衝撃を与えている通り、衝撃は固着したねじに対しては有効な手段です。
しかしながら、通常のドライバは摩耗による消耗を抑えるため比較的硬度が高く設計されており、実は衝撃に対して強くありません。程度にもよりますが、座金を叩く使い方は先端を消耗・疲労させ、不意の破損を招く可能性が高まります。
貫通ドライバで衝撃を与える方法は補助的なものと思っていただき、軽い衝撃でダメな時はインパクトドライバの使用をおすすめします。場面に合った工具選びで安全に作業を行いましょう!