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本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。
一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。
(cyclist掲載日:2013/2/24)
前回#16工具はともだち<16>工具箱のバリエーション 増える工具をスマートに収納するには
今回は、ボルトとナットの締付けのメカニズムや、締付けにより生じるボルトの変化を見ていきます。
締めたボルトが緩まないのは、ネジ部やナットの座面部分に摩擦力が働くから。締付けた状態を100%とすると、ボルトの締付けによる摩擦力の割合は、およそ90%と言われています。
つまり、締めつけたことによって、伸びたボルトが元に戻ろうとする力が働くためということです。第1回では、「別れを惜しんで離れようとしない、終電前のカップルみたいなもの」と紹介しましたね。
メカニズムとしては、六角棒レンチやドライバーなどを使用してボルトを締付けていくと、ボルト本体に引っ張り方向の力がかかります。引っ張られて伸びたボルトは、バネのように戻ろうとして、締めつけているパーツ類を圧縮します。
ボルトがキッチリ締まっている状態(固定できている状態)とは、引っ張られて伸びようとする力と、パーツ類を締め付けながら(圧縮しながら)元の形状に戻ろうとする力のバランスがとれている状態のことを言います。専門的にはこれを「軸力が働いている状態」とも言います。
ボルトの締付けが弱いと、周りの振動や熱などの影響を受けてさらにバランスが崩れ、ボルトが簡単に緩んでしまいます。逆に締付ける力が強すぎると、圧縮されているパーツを始め、最悪の場合はボルト自体が破損してしまうというような状況をまねいていてしまいます。
お似合いのカップルが、喧嘩してしまった…ということですね。
カップルが些細なことで喧嘩してしまうのは、仕方ないにしても(笑)、ボルトとナット間でバランスが崩れてしまう状況ばかりでは困ってしまいます。ところが実際には、締付け過ぎや、締め付け不足、場合によっては締め忘れによるトラブルが、自転車業界に留まらず、様々な趣味・産業の領域においてかなりの頻度で発生しているという情報もあります。
KTCでは、こういった問題の中でも特に締付け過ぎが、後々大きなトラブルを引き起こしてしまうと分析しています。ですからみなさんには、正しい工具の使い方やボルトの締付けを発信し続けていきたいと思っています。