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【戻ろうとする力】
締めたボルトが簡単に緩まないのは、締め付けたことで伸びたボルトが元に戻ろうとする力が働くためです。
ボルトを締め付けると、ボルト本体には引っ張り方向の力がかかります。引っ張られて伸びたボルトは、バネのように元に戻ろうとして、締め付けているもの(部品等)を圧縮します。ボルトが締まっている(固定されている)状態とは、引っ張られて伸びようとする力と、戻ろうとして締め付けるものを圧縮する力のバランスが取れている状態です。
ゼムクリップを例に説明します。ゼムクリップには内側と外側、2つの楕円形があり、紙をはさむときにはこれらの楕円を上下に広げます。するとクリップが元の位置に戻ろうとする力が働いて、紙をとめることが出来ます。
▶このように、ねじも引っ張る力と戻ろうとする力によって、締まっています。
【ねじは伸びる】
目に見えないとても小さな変化量ですが、ねじは締結によって伸びたり縮んだりしています。そのため、ねじを締めすぎると伸びてしまい挟む力が弱くなります。ボルトの締め付けが弱いと、周りの振動や熱などの影響でこのバランスが崩れ、ねじは緩んでしまいます。逆に締め付けが強いと、締め付けられた物(部品等)やねじ自体の破損を招きます。
ねじをクリップに置き換え、ねじが伸びる実験を行います。
弾性域から降伏点を越え塑性域に入ると、トルク(締め付ける力)の増加に対し、ボルトが伸びる割合は大きくなります。しかし、人間の五感でこの変化を感じることは困難です。ある程度経験を積んだ作業者でも、トルク不足による緩みを防ぎたいという気持ちが無意識に働き、規定トルクを超えたトルクをかけがちです。また、最近では各産業分野において、鉄以外のさまざまな素材が使われています。アルミや樹脂などの部品は、鉄製のものに比べ柔らかいため、同じ感覚で締め付けると部品自体を破損させてしまう可能性が高くなります。
トルク不足によるボルト・ナットの緩みだけでなく、オーバートルクによるボルトや部品の破損は、重大な事故を発生させる原因となります。そのため、経験や勘だけに頼ったトルク管理でなく、トルクレンチを用いた正確なトルク管理が望ましいのです。
トルクとは、Lの長さのレンチ(※)でFの力をかけた時にボルトに与えられる回転力Tの事です。
例えば、100N(約10kgf)の力を1mの長さのレンチにかけた時のトルクは100N・m(約10kgf・m)となります。
100N(ニュートン) × 1m= 100N・m(ニュートンメートル)
トルクとは「F(力)✕L(長さ)」ですから、長さが長くなるほど大きなトルクがかけられる事になります。
100N(約10kgf)の力を2mの長さのレンチにかけた時のトルクは200N・m(約20kgf・m)となります。
トルクレンチと言っても、多種多様・・・。
使う個所や、使用するトルク帯を考えなければなりません。
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