『工具はともだち』について

本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。

一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。

工具はともだち<20>計算式を図解!適正な締付けトルクを計算してみよう

(cyclist掲載日:2013/4/7)

 

前回#19適正な“締付けトルク”値は、世の中のほぼ全てのネジ部分に設定されている!

 

初心者サイクリストのみなさんに工具類を紹介しながら連載してきた「工具はともだち」も、いつの間にかボルト・ナットの締め緩め=トルクといった、工具を扱う上で非常に大事な部分になってきました。
企業においては、この適正なトルクでの締付けを怠ったために大きな事故に繋がり、訴訟など社会的な責任に繋がってしまったケースもあります。安全を誇る新幹線でも、ボルトの締め忘れなどの事例があったそうです。
そもそも、ネジを締付けるトルクを具体的な数値で表すにはどうするのでしょうか? 下の図をご覧ください。

 

トルク①

 

図を読み解くと、トルクとは「Lの長さのレンチで、Fの力をかけた時にボルトに与えられる回転力T」と言うことができます。ネジが締まっている力というのは、この回転力のことを指しています。
例えば、1mの長さの工具で100N(ニュートン)の力をかけた時の回転力(トルク)は、100N.m(ニュートンメートル)となります。数学的に、計算式を表すと下記のようになります。

 F(100N)×L(1m)=T(100N.m)

また、200mm工具で、10N.mのトルクをかけたい場合に必要になる力Fは、50Nとなります。計算式は以下のとおり。

 F(力)×L(長さ:0.2m)=T(10N.m)
 F(力)=T(10N.m)÷L(長さ:0.2m)=50N.m

でもこのトルク、実際のところ、人間の手で締めつけた力を数値化し、表現・理解することはできませんよね。そこで必要となるのが、トルクレンチです。数学が苦手で計算式に頭が痛くなったという方も、これなら大丈夫!

トルクレンチが登場する前までは、プロの世界でも確実なトルクでの締付けを勘だけに頼っていました。今ではトルクレンチを使うことによって、初心者でも確実に、正確なトルクで締付けができるようになってきました。カーボンパーツなど、シビアな材質を使用する自転車の世界では、特に注目されている工具ですね。

トルクレンチは、次の写真のように、仕様などで大きく3つに区分することができます。

 

torquewrench_3

 

それぞれの用途や特徴などは、次回紹介しますね。

前回、「ほとんどの場合、私たちの自転車のどこかに適正な締付けトルク値が記載されている」とクイズを出しましたが、答えは「ロードバイクなどのシートポスト部分」。

よく見てみてください。締付けに決められているトルクが刻印されています。その他の部位にも記載されていますので、ぜひ探してみてくださいね。

ボルト、ねじの締結についてはこちらをチェック!

ねじの基礎知識

https://ktc.jp/kiso/lesson/screw.html

 

トルクレンチの基礎知識

https://ktc.jp/torque/