『工具はともだち』について

本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。

一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。

工具はともだち<19>適正な“締付けトルク”値は、世の中のほぼ全てのネジ部分に設定されている!

(cyclist掲載日:2013/3/24)

 

前回#18ボルト・ナットの適正な距離感は? “締付け過ぎ”を徹底解剖

 

今年の春は、早くきましたね。東京の上野公園などは、既に桜が満開かと。比例するように、颯爽と駆けるサイクリストの方を見かける機会が増えたような気もします。

前回、締付け過ぎは要注意といった内容を書かせていただきました。愛車をきれいに掃除することは、過度にでもお勧めしたいなとは思うのですが、ボルト・ナットの締付け過ぎに関してはご法度ということをご理解いただければ、長くお付き合いしていただけると思います。

 

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ただ、締付け過ぎの度合いなんて、人間の感覚では、体感したり見極めたりすることは、現実的には難しいことです。さらに、前回もお話させていただきましたが、降伏点を超えたボルトは変形してしまいますし、締付ける力が増加するにつれて、変形する度合いは大きくなっていきます。ある程度の経験を積んだ作業者でも、締付け不足による緩みを防ぎたいという気持ちが無意識に働き、必要以上の力で、ボルト・ナットを締付けがちです。

「Cyclist」のイベント時に、ゲーム感覚で参加者の皆さんに適正な締付けを体験して頂きましたが、経験のある作業者と同様に、適正よりも強めの締付け状態が多くみられました。

 

ネジは、その材質によって、締付けられる力が設定されています。そして、ネジを使って固定するパーツの材質を勘案させた適正に締付ける力が決まっています。そのような締付ける力のことを、「トルク」「締付けトルク」と呼んでいます。

「トルク」は、回転軸にかかる力のことで、自転車に例えるとペダルをこぐ力と思って頂ければ結構です。ペダルをこぐときに、クランク軸にかかっている力のようなイメージですね。

 

トルク①


トルクの大きさは、N.m(ニュートンメートル)といった単位で表されます。馴染みのないことばって思わないくださいね、これから愛車を大切にメンテナンスして頂くための最も重要なキーワードのひとつですから。

この「締付けトルク」は、自動車やバイクの整備をされる方が、メンテナンス時に使用する「サービスマニュアル(整備要領書)」にも記載されています。例えば、ホイールについているナットは、どれくらいの「締付けトルク」で締めればよいかや、あるパーツを取り付けるボルトは、どれくらいかなど、主要な部分には、ほぼ全てに「締付けトルク」が設定されているのです。

それでは、私たちの自転車は?

実は、もっと簡単なところに記されています。ヒントは、愛車を5分程度眺めてみてください。すぐに答えがわかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

次回は、その答えと、「トルク」についてのお話、それに関連する工具類をご紹介しますね。

ボルト、ねじの締結についてはこちらをチェック!

ねじの基礎知識

https://ktc.jp/kiso/lesson/screw.html

 

トルクレンチの基礎知識

https://ktc.jp/torque/