『工具はともだち』について

本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。

一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。

工具はともだち<11>サイズの合った工具を使う大切さ ドライバー使用時の“虎の巻”

(cyclist掲載日:2012/11/11)

 

前回#10工具使用のNG例 衝撃に耐える「インパクトドライバ」も登場

 

千葉・幕張で11月2~4日に開催されたサイクルモード2012。サイクリストに愛用していただきたいツールや、女子向けメンテナンス講座が開催されてて、興味深く拝見してきました。また、いつも感じるのは、「サイクリストは熱い(熱心)」ということ。以前、出展者として接客した時にも、その熱さに驚かされたものです。

そんな熱い皆様にも、また初心者にも読んでいただきたいNGシリーズ。前回に引き続き、第2弾です。

NG例

「少し隙間があるけど、回せそうだし、サイズ違いでもいいか」

saizu

これは、メンテナンスに取り組み始めてすぐの方に多いようです。ボルトやナット、またプラスネジのどちらでも、NGです。

ボルト・ナットの精度と比較しますと、工具の精度の方が一般的には高く、ネジのサイズにぴったり嵌合(かんごう)するように作られています。サイズも細かく設定されており、ミリ単位だけでなく、インチ単位のサイズの工具も揃っています。ここに盲点が。

少しだけ工具のサイズがボルト・ナットより大きかったとしても、工具の一部がボルト・ナットに中途半端にかかり、回せてしまう場合があります。これを専門的には、「ナットの山に工具がかかる」といった言い方をします。

これは、“たまたま回った”という状況にすぎないのです。繰り返し同じような使用方法を続けていると、いずれナットの山が丸くなってきて、最終的には山が潰れて回せなくなってしまいます。

もし一度でもこういった使い方をしたと思われたら、ナットの角が丸くなっていないか確認してみてください。丸くなっている形跡があったら、すぐにキッチリとサイズの合った工具に買い替えることをお勧めします。山が丸くなってしまったら、取り返しがつきませんよ。

 

家庭でよく見かけるのは、DIYなどでプラスネジの山がなめて(ネジ山が潰れて丸くなって)取れなくなってしまった、というシーン。これは、プラスネジのサイズに対して、ドライバーが小さい場合に起こります。

ドライバno

ガタついているものの、工具がネジ山に入り、その状態で勢いよく回してしまうと…もうお分かりですよね。大切な愛車のネジをつぶしてしまいます。ネジ山がつぶれると、普通の工具では緩めることも出来なくなり、最悪の場合、愛車にキズをつけてしまうような処置でしか取り外せなくなる場合もあります。

サイズの合わない靴って、履き心地が悪いですよね。それと同じなんです。工具も、サイズの合ったものを使いましょう。

ドライバー使用時の2つのコツ

ドライバセット

最後に、ドライバー使用時の“虎の巻”。押す力と回す力の比率を「7:3」程度にしましょう。ドライバーは「押し回し」、つまりネジを押しながら回すのが基本です。特にプラスネジは、ドライバー先端がネジの外に逃げようとする「カムアウト」現象が発生します。固く締まったネジを緩める際は、押す力を強めにするとうまくいきますよ。

また、ドライバーのサイズ選びは大切です。正しいサイズを選択するコツは、最初に、ネジサイズより大きめのドライバーを試すことです。ドライバーのサイズが大き過ぎるとねじに入らないので、ネジ山を痛めてしまう心配がありません。

 

工具を作り続けて60年以上、KTCはその歴史の中で、大切にしているキーワードが3つあります。1に“安全”、2に“快適”、最後は“能率・効率”です。

前回のNG例を含め、最優先にしているのは、サイクリストの皆様が安全にメンテナンスをできるお手伝いをすること。それから、楽しんで頂ければさらに嬉しいですね。末永く、お付き合いくださいね。