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本記事は産経デジタル 「cyclist」にて掲載されていた連載記事を再録したものです。
一部修正・画像の差替えを行っておりますが、内容は掲載日時点のものとなっておりますのであらかじめご了承ください。
(cyclist掲載日:2012/08/04)
前回:#3 自転車工具の代表はヘキサゴンレンチ(六角レンチ)
ロンドンでオリンピックは佳境を迎え、日本人選手のさらなるメダル獲得に期待がかかりますね。夏真っ盛り。自転車をちょっとお休みして、涼しい部屋でスポーツ観戦なんて方も、いらっしゃるんじゃないでしょうか? かくいう私は、クーラーの効いた部屋で、この原稿を書いています。
前回は、自転車メンテナンスのための工具を一気に紹介させていただきました。遠慮せずにガツンと紹介したので、どれを選ぶべきか迷われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、工具のいいところ(性格)を紹介しますので、選ぶ際の参考にしていただければと思います。
まず、サイクリストに必須かと思われるのは、コンパクトな折りたたみタイプの工具です。最近では、ボディがカラフルなタイプなど、各メーカーから様々な商品がラインナップされていますね。
▲マルチツール HLM04:左 HLM08:右 (※2022/1現在共に生産終了)
コンパクトなボディに先端サイズや形状の異なる数種類の工具が付属しているものを、私が勤める工具メーカー「KTC」では「マルチツール」と呼んでいます。工具を使わないときは先端を収納し、バッグやポケットに入れて持ち運びができるなど、非常に便利ですね。サイクルショップや、自転車を取り扱うホームセンター、工具のプロショップなどで入手できます。
ここで私からアドバイス。携帯用なので、できるだけ軽い方がいいというご意見を多くいただきますが、軽いだけじゃだめなんです。必要な工具だけをすぐに取り出せたり、取り出した工具を固定できたりするなど、軽さ以外でも、使い勝手を工夫されている商品を選んで下さいね。
また、マルチツールは、万能ではありません。コンパクトさを優先しているため、工具の長さが短く、錆びて固く閉まってしまったボルトや、強く締付けられたボルトを緩めたりすることには向いていません。小さいがために、大きな力をかけた作業が難しいからです。ですので、あくまでも、サイクリング中などの出先で緩んだボルトを締めたりする場合の応急処置用、と考えておいてください。
そしてできれば、今後の様々なメンテナンスへの対応も含めて、L形のタイプも揃えていただきたいと思います。長辺と短辺からなるL形のタイプは、短辺側をボルト穴に差し込み、長辺側で力をかけると、大きな力が加えられ、固く閉まったボルトも比較的簡単に緩める事ができます。また、逆に長辺側をボルト穴に差し込み、短辺側で回すと早回しが出来ます。まさに一石二鳥のスグレもの。自転車だけでなく自動車のプロメカニックの方も、必ずお持ちですね。
プロが使うこだわりの道具だけに、表面のメッキや軸の形状などは様々です。私がお勧めしたいのは、軸が丸くなっているものです。しっかりとした強度を持ちながら、丸い形状のため、早回しがすごく簡単にできます。多少のプロ気分を味わえるかもしれませんね。
▲HL259SP:左 HLDA2509:右 HLDA2509は柄が丸くなっている
最後に、マメ知識。この六角棒レンチ、自転車の業界にのみ「アーレンキー」(Allen Key)いう呼び名があります。由来は、以前米国にあった工具メーカーの名前とのこと。実は私も、自転車に携わるまで知りませんでした。