Index
皆さんこんにちは!
第2戦SUGOの残念な結果の対策期間もつかの間、スーパー耐久シリーズの中でもっとも注目度の高い富士24時間レースに今年も、「AutoLabo Racing 素ヤリス」は参戦しました。
今回は、長く、悔しくもあった24時間耐久のレポートをお届けします。
富士24時間はレース時間も長く、イベントコンテンツも多岐にわたります。そのため通常より少し早く、水曜日の早朝にサーキットに到着。ピットへの車両、機材搬入からスタートです。
前回の悔しい思いを挽回する目標を持つ我々チームは、和気あいあいの中でも着々と準備を進めます。サーキットに入ると、徐々に緊張感でピリっとする感覚は、何回チャレンジしても変わりません。これが、レースの醍醐味なんです。
今回24時間という長丁場のレースへの対応として、新しいエンジンをヤリスに搭載しました。
そのため、搬入完了後、まずは、新しいエンジンの慣らし運転から開始です。新しいエンジンを搭載した場合は、エンジンの性能を効率的にするため、徐々にエンジン回転数を上昇させていきます。エンジン回転数のピークを、最初は、3500回転から開始し、徐々に500回転程度ずつ上げていき、約110分程度走行を重ねました。
慣らし運転は、概ね順調で、予定どおり終了。簡単なメンテナンスを施し、明日の公式練習を迎えることになりました。
翌、5/23(木)は、公式練習日です。
公式練習は、夜間走行枠を含め、合計4時間が割り当てられています。
まずは、北川ドライバーにて、90分間を使用して、車両セットアップの確認。その後は、各々のドライバーが割り当てられた時間を走行。ドライバーの練習量を増やす必要はあるのですが、長丁場のレース前に過度に負荷をかけることや、種々のトラブル誘発を避けるため、極力短い時間とする作戦をとりました。
その反面、ピットは、決勝を見据えた準備に取り掛かります。
24時間レースはメンテナンスタイム(10分)の義務があり、マシンを止めてメンテナンス作業を実施します。本戦で、素ヤリスはエンジンオイルの交換、フロントローター・パッドの交換、リアドラムブレーキAssy交換を行う予定であり、この公式練習の2回目走行終了後、そのシミュレーションと、パーツづくりを実施。
まず、決勝で使用するためのフロントローターとパッド(SET1)の焼き入れを実施。2本目の走行後には、本番を想定し、熱いままのブレーキ交換をスムーズにできるかをトライ。実は、この作業は、私が担当として行います。この練習では、5分ほどでローター・パッド交換が出来ため、時間的な余裕もあることも確認。本戦での自信にも繋がる
いい練習が出来ました。
また、24時間レースではコース照明だけでは暗く、夜間走行時用のフォグライトを装備します。過去に夜間練習時に小動物等の飛び出しで接触した事例もあったので、ライト等最低限の調整を行い、終了。
様々なトライアルを、予定通り実施でき、いい状況で公式予選日を迎えることが出来ました。
今回特別にお越しいただいたTEAM au TOM’S伊藤大輔監督もご機嫌模様でした。
5/24(金) いよいよ公式予選日です。
予選日の天候は、朝の曇り模様から徐々に回復し、予選開始時間には青空が広がり始めます。耐久日和といった感じです。ピットは夜間走行があったため、朝から車両メンテナンスを行います。ブレーキパッドの変更や、清掃、各部の緩み確認など、走行前の最終チェック。もちろん、結果は、全く問題なく、公式予選スタートです。
決勝で使うタイヤが、この予選のABドライバーが使ったタイヤを使わないといけないルールなのですが、今年から使用のブリヂストンのスリックタイヤは、FF車の素ヤリスには、耐久面で、他社に比べて不利になる可能性があります。そのためタイムアタックに費やす時間も極力短くします。いわゆる、一発で決める作戦です。
ピットの期待を背負って、ABドライバーが2名が順番にタイムアタック。
経験豊富な2人のドライバーは、予定通り、一発のタイムアタックで予選通過タイムを記録。クラス13位の結果で、予選を無事通過。ここまではチームの思惑通りです。
予選通過報告にほっとする間もなく、ピットでは、明日に向けて、車両のメンテナンスを行います。24時間無事走り切ってくれ!という思いを込めて、フロントハブの交換、フロントブレーキ・パッドの交換、エンジンオイルの交換、オイルエレメントの清掃、ミッションオイルの交換、リアブレーキ(シュー)の交換、ボルト類のゆるみチェック、下回りのチェックなどを確実に実施。概ね1.5時間程度で終了。特に、ブレーキシューは鬼門で、変摩耗防止の調整までを行い、終了。準備は整いました。あとは、決勝日、晴れることを願うのみです。
5/25(土) 決勝日です。
午前中には、ピットウォークなどが行われ、ファンとの交流、KTCブランドを皆さんにもっと知っていただくためのステッカー配布も、S耐では行います。
あっという間に交流の時間が終わり、スタート準備です。燃料の準備や、暖気運転を慣行し、進行スケジュールに合わせて、車両をグリッド上に移動。レース放映をご覧いただいた方はイメージしやすいかもしれませんが、コース上で、スタート前の最終チェック。タイヤのトルク管理や、各部の再チェック。何度も何度も時間のある限りチェックし、メカニックとしては、完璧な形でドライバーに運転できる車両へと、仕上げます。
さあ、24時間レースのスタートです。
15時前にフォーメーションラップがはじまり、各車グリッドを離れていき、15時にローリングスタートでレーススタート。まずは、およそ90分後のドライバー交代を目指します。Aドライバーは、予選で使用したタイヤを装着しているため、常に全開ではなく、タイヤの消耗状態を確認しての走行を続けます。
エンジン特性上、ストレートでは他車に離されるものの、コーナリング重視に切り替えた車両は、他車よりも大幅にコーナーでは速く、中団あたりでの走行が可能に。タイヤをいたわった走りで、懸念していたタイヤの摩耗度合いも、想定内で、順調に規定周回を終了し、ドライバー交代。
続くBドライバーは、弱冠18歳の若手ドライバー。しかしながら、Aドライバー同様中団と同じペースです。トラブルもなく48周回を走り続けて交代します。ここまでは、何の問題もありません。
続いて、夕暮れどき18時ごろに、Cドライバーに交代。
ここでも、最初は順調に走行を続けていました。ピットには、少し余裕ともいえる空気が漂ってきたその時です。
最終コーナーを立ち上がり、富士の長いストレートを走行している車両の無線から・・・
「エンジンが吹けなくなりました」・・・。何かトラブルが発生したようです。
メカニックは、サービスカーに修理に必要であろう部品や工具類を詰め込み、車両が止まってしまったエリアに向かいます。24時間レースは、安全に配慮し、特別措置として、特別エリアでの復旧作業ができるのです。
無線が入って約1時間後、オフィシャルカーに引っ張られ、素ヤリスが特別エリアに戻って来ました。
早速、故障診断開始です。判明したことは、搭載しているECU系(コンピューター関係)
のトラブルのようです。このトラブルは、通常、ディーラーでしか修理できないトラブルでした。ディーラーに持ち込む??といっても、もうすでに閉店しています。素ヤリスは、約3時間で、リタイア・・・と諦めかけた時、なんと、カーメーカーの開発の方々が、最適なリペア方法を教えてくださり、トラブルは、見事修復!再スタートです。
再始動後30周ほど走り、再びドライバーをDドライバーに交代して走行を続けます。少しすると、天気予報にも無かった雨が降りはじめ霧雨と小雨を繰り返すスティントに。次のドライバー交代時にもそのままドライタイヤを継続し、Eドライバーに交代。伊藤監督の登場です。ドライタイヤで走行するチームとウェットタイヤで走行するチームが半々のなか、FR車勢とのタイム差が縮まり、それら他車と同じペースか、むしろそれらより少し早いペースで走行できるようになってきました。
その後もドライバーを交代しながら、明け方の5時ごろを迎え、定期メンテナンスを実施。
ECUトラブル時に、義務化されている10分のメンテナンス時間を消化している為、素早く作業を終えて、約7分の停車時間で、エンジンオイルの交換、フロントローター・パッドの交換・リアドラムブレーキAssyを交換。今回は、KTCの電動インパクトレンチをなんと4台持込、4輪同時に作業、仮締めモードを使うことで、トルクチェックまでの時短を、実現。ほんとに助かった瞬間でした。
その後、Cドライバー→Dドライバーと走行していたのですが、ブレーキング時にリアタイヤがロックしやすくなり、車両の様子がおかしいなぁと思っていたら、ブレーキフルードが抜けてしまうトラブルが発生してしまうことに。再度ピットインして、交換したばかりのリアドラムAssyの交換とエア抜きを行い、15分ほどでコース復帰。走行を続けます。
数周の走行確認後、Dドライバー→Eドライバー→Fドライバーと走行を続け、残り2周ほどでピットインを迎えようとしていたタイミングで、今度は他車と接触。いろんなことが起こる耐久レースです。接触くらいで、諦めるわけにはいきません。左側を接触とのことで、私の担当であるタイヤ交換時にハブのがたつき確認を行い、再び走行をはじめました。
・・・が、外したホイールは割れており、その後は、左フロントはかなりアライメントが狂ったまま走行することに。Bドライバー→Eドライバーと順調に車を走らせていましたが、残り40分ほどで再びブレーキトラブル。リアブレーキのシューが全て摩耗してなくなっています。しかし、チームは完走を諦めません!きっちりと車両の修復を行い、残り15分ほどで再びレース復帰。
518周の走行、11位でなんとかチェッカーを受けることが出来ました。
今回も、思っていた結果が残せず、またもや宿題を持ち帰ってしまいました。
でも、これが、耐久です。次戦に向けて、さらにチームが強くなるよう、改善を進めます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
引き続き、応援をよろしくお願いします。